《怪異》事典
目次
アマビエ“予言獣”
ハクタク、麒麟、件(クダン)、姫魚、神社姫……古今東西あらゆる伝承に登場する「予言獣」と呼ばれる怪異たち。常に時代の転換点に出現し、飢饉や流行病、戦争などを予言し人々に告げて去っていくという存在。その中でも近年急激に多くの人々に目撃されているのがこのアマビエという怪異だ。
アマビエは半人半魚の姿をしており、海から光を放ちながら出現する。これから起こるであろう災いを予言し、「厄災を退けるために、私の姿を描き写した絵を人々に見せよ」と告げて去っていくのだという。彼の姿絵には護符としての効果があるらしく、現代の印刷や通信技術によりアマビエの姿絵は一気に世界中に拡散された。
アマビエが真の予言獣なのか、はたまた何か別の目的を隠し持った何者なのか、護符の効果は本当にあるのか……それらはまだ判別がつかない。しかし唯一つ確かなこと、それは彼の予言は的中し、時代は転換期を迎えたことだ。
共鳴感情
自己顕示(欲求)、不安(情念)、希望(理想)、依存(関係)、庇護(関係)
憑依時の変異
アマビエは人に憑依しない。代わりに、彼の姿を描き記した絵画に憑依し、魔力を分け与える。
アマビエの姿絵は、彼が予言した厄災を避けるための護符となる。護符の効果は、姿絵を描く〈芸術:絵画〉判定の成功数に依存する。厄災を避けるための判定に、その成功数点のダイスボーナスを得ることができる。
共鳴表
「汎用共鳴表:災厄タイプ」を使用する。
シナリオ独自の共鳴表を用意してもよい。
アンゴルモア“宙 より来る終末”
16世紀の占星術師ノストラダムスが残した予言集に記されている奇怪な一節……「1999年の7の月、空から恐怖の大王が来るだろう」。
この予言が人類の滅亡を示しているという終末論的解釈が、1900年代末期の社会不安なども相まって空前の社会現象を巻き起こした。空から来る終末とは一体何なのかについて、様々に解釈された。隕石。核戦争。はたまた疫病か。
空から来る恐怖の大王は、彼が目覚めさせるという謎の存在「アンゴルモアの大魔王」とよく混同され、多くの人にとってはこちらの名前の方が通りがよくなってしまっている。
実際には1999年に人類は滅亡しなかった。予言は外れたわけだ。しかし、本当にそうだろうか? 今もなお、人類の終焉に対する恐怖は拭い去れていない。予言書に示されている1999年とは西暦を意味するのかすら分からないのだ。未だ謎に包まれたままの終末の王は、今も宙の彼方から近づいてきているのかもしれない。
この怪異についての詳細は不明だ。実際に世界を終わらせる能力を持っているのか、はたまたそういう不安を人々に信じ込ませ不安を煽る存在なのか、それは分からない。なぜならまだ誰も観測したことが無いからだ。
共鳴感情
不安(情念)、恐怖(情念)、絶望(傷)、諦観(傷)
憑依時の変異
終末論に囚われ、世界の終わりを信じ込むようになる。
共鳴表
「汎用共鳴表:災厄タイプ」を使用する。
シナリオ独自の共鳴表を用意してもよい。
いづな“小さな小さな忠臣”
マッチ箱ほどの大きさの、イタチのような小動物の姿をした怪異。「管狐(クダ)」と呼ばれることもある。元々は山に住むが、竹筒に入れて連れ帰り「飯綱の法」という術により飼いならせば使い魔のように使役することができる。知能が高く人語を解するのでコミュニケーションを取ることも容易だ。
それほど強い力を持つ怪異ではなく、できる事といえば人に取り憑いて精気を吸う事くらいで、あとは小動物でもできるような事(小物を収集してくるなど)程度だ。しかし、それでもこの怪異がその筋の霊能力者たちに非常に重宝されているのは、主人に対して忠実で献身的であるという性質による。命令されればどんな指示でも喜んで従い、また放っておいても主人の利になるよう自分で考えて、富や情報などを集めてきてくれる。
しかし一部では、いづなは「外道」と呼ばれ疫病神扱いもされている。なぜかいづなを使役する者が破滅することが多いのだ。これをいづなの呪いと取るものもいるが、実のところいづなには悪意はなく、ただただ主人に対してどこまでも忠実なだけだ。しかしその献身を受け続けた人間は、それ故に怠慢になったり慢心したりと、悪しき心を持ちやすい。いづな使いの破滅の原因は、人間の弱い心ゆえなのだ。
共鳴感情
所有(欲望)、怠惰(欲望)、奉仕(関係)
憑依時の変異
いづなからの憑依には2種類ある。ひとつは精気を吸うための憑依、もう一つは主人に対する憑依だ。
対象の精気を吸うために憑依する場合、いづなは対象に気づかれぬよう、小さな体で慎重に近づく。〈*知覚〉で難易度ダブルの判定を行い、失敗すると憑依判定なしで【憑依】状態となる。ただしこの憑依は極めて一時的なもので、効果としてもMPを1D6吸われる程度のものだ。
主人に対する憑依では、主人となった者はいづなを自由に使役できるようになる。いづなが憑依している間、共鳴者はこの怪異の持つ共鳴感情を自分のものとして取得することになる。解除は嫌がるいづなを捨て、野に返すしかない。
共鳴表
「汎用共鳴表:因縁タイプ」を使用する。
シナリオ独自の共鳴表を用意してもよい。
エニグマ“暗号機神”
第二次世界大戦中にナチス・ドイツが使用し、幾多の暗号解読者たちを悩ませた伝説的な暗号機……その名を冠する暗号機神エニグマは、暗号そのものに憑依する怪異だ。
エニグマが憑依した暗号はそれそのものが怪異と化し、多くの暗号解読者や数学家、知の探求者たちの好奇心を刺激し強烈に惹きつける魔力を発するようになる。それが子どものための簡単な暗号であれ、世紀の難問であれ、エニグマが憑依するとその謎は「世界の深淵の知識(アカシックレコード)」とリンクしてしまい、暗号を解読する者の思考をその真理へと強制的に接続させる。
まるで誘蛾灯のように暗号に共鳴し導かれた者は、知らず識らずのうちに理解すべきでない真実に気づき、狂気へ陥っていく。
共鳴感情
好奇心(欲望)、秩序(理想)、狂気(傷)
憑依時の変異
エニグマが憑依した暗号を解こうとすると、共鳴判定や憑依判定が発生する。
憑依された者は〈暗号〉技能に+3Dのダイスボーナスを得るが、この状態で〈暗号〉判定を行う度に〈∞共鳴〉レベルが1D3ずつ上昇していく。
憑依を解除するためには、目の前にある暗号や謎を完全に解き切るほかない。
共鳴表
「汎用共鳴表:伝承タイプ」を使用する。
シナリオ独自の共鳴表を用意してもよい。
カラドリウス“癒しの白い鳥”
伝説の鳥カラドリウス。体が白く、首の周りと尾の付け根、足が黒く首から黒い袋を提げている。この鳥は病人の枕元にごく稀に現れ、病人をじっと見つめる。カラドリウスには病魔を監視し行動を制限する力があるのだ。どのような重病人でもカラドリウスが病魔を監視している限り生き続ける。
しかし、カラドリウスが視線をそらし、病魔が自由に動けるようになると病状は進行し、病人はついに死んでしまう。
カラドリウスは回復の見込みがある病人であれば、病魔を吸い取ってくれることもある。
どのような病魔なら吸い取れるのか、誰を助けるのかは神の思し召しかはたまたカラドリウスの気まぐれなのか。それは誰にもわからない。
病人が死ぬのはあくまでも病魔によってだ。カラドリウスは死を告げる鳥ではなく、病魔とそれに取り憑かれた人間を見定める鳥なのだ。
共鳴感情
庇護(関係)、尊敬(関係)、諦観(傷)
※カラドリウスと病人の関係性やシナリオの意図によって自由に選択してよい
憑依時の変異
カラドリウスは人間に憑依しない。
しかし、カラドリウスの精神と大きく共鳴すると、彼の記憶や思考がなだれ込んでくることにより大きな影響を受ける場合がある。
共鳴表
「汎用共鳴表:因縁タイプ」を使用する。
シナリオ独自の共鳴表を用意してもよい。
グリーンアイドモンスター“嫉妬の瞳”
シェイクスピアの戯曲オセローにうたわれている「緑色の目をした怪物」。人を嫉妬に狂わせて正常な判断を失わせる怪異だ。嫉妬はカトリックにおける七つの大罪の一つであり、この怪物は蛇……それも水に棲む水蛇の姿をしていると言われている。
その緑色の瞳に魅入られた者は嫉妬心を肥大化させられ、暴走してしまう。瞳は次第に緑色になり、目の奥が渦を巻いているような模様を呈す。瞳が完全に緑色に染まってしまった時、心は嫉妬心に完全に食い殺され、妬ましく思う対象へ攻撃し貶めようと試みたり、あるいは愛する者を独占したいがために殺してしまったりする。いずれにしても待ち受けているのは自身の破滅だ。
共鳴感情
嫉妬(情念)、劣等感(傷)
憑依時の変異
強い嫉妬心を持つ者がこの怪異と遭遇し、緑色の瞳に魅入られると憑依される。
憑依されたものは心を嫉妬心に突き動かされ、暴走してしまう。嫉妬心を覚える対象を前にするたびに〈*自我〉判定が発生。失敗すると〈∞共鳴〉レベルが1上昇し、暴走行動を取る。〈∞共鳴〉レベルが10以上になり【逸脱】してしまった場合、取り返しのつかない行動にでてしまう。その先に待つのは破滅だけだ。
グリーンアイドモンスターは悪魔に分類される怪異であり、悪魔祓いに類する儀式を行うことで憑依を解除できるかもしれない……が、七つの大罪の一つを司る彼は悪魔の中でもかなり強力な存在であり、そう簡単にはいかないだろう。
独自の共鳴表
1瞳緑化 | 片方の瞳が緑色に変化する。(効果は2つまで累積する) |
---|---|
2 |
《怪異:グリーンアイドモンスター》との親和性が高まり、[共鳴感情:嫉妬(情念)]を獲得する。(シナリオ中継続) |
3嫉妬心流入 |
グリーンアイドモンスターに憑依されている人物の思考が流れ込んでくる。それは嫉妬心の断片でもよいし、誰に対してどのような嫉妬心を持っているのかの具体的なイメージでもよい。 どんな思考が流れてきたかはDLが決定する。 |
4眼痛 |
目が激しく痛み、うまく物を視ることができなくなる。1D6時間の間、視覚に関わる判定の成功数が-1される。 ※〈医術〉の成功で無効化できる。 |
5 |
《怪異:グリーンアイドモンスター》との親和性が高まり、[共鳴感情:劣等感(傷)]を獲得する。(シナリオ中継続) |
6霊視覚 |
瞳が変質し、本来見えないものが見えるようになる。 シナリオ中〈★霊感〉レベル+1。 |
くねくね“理解不能存在”
“ソレ”は白い(まれに黒い)色をしており、おおよそ生き物とは思えないくねくねとした異様な動きをする。ほとんどが夏に、川や田んぼなどの水辺の近くで目撃されている。“ソレ”を目にした時、注視し、それが何者であるかを理解してしまうと、即座に精神に異常をきたす……。
それが、くねくねと呼ばれる怪異の特徴の全てだ。まったく人の理解の範囲をこえている存在であり、それについて知ろうとすることそのものが禁忌として扱われている。出現条件や対処法なども一切不明であり、運が悪いと間近で目撃してしまって即廃人と化すという、野放しの災厄とでもいうべき存在だ。
おおよそこの世は理不尽であり、人の安寧など怪異や運命の気まぐれであっという間に瓦解する。できることは、彼らのような存在と出会わないよう祈ることだけだ。
共鳴感情
好奇心(欲望)、恐怖(情念)、狂気(傷)
憑依時の変異
この怪異を視界に捉えると、強制的に〈*知覚〉判定が発生する。これに成功すると、即座に〈∞共鳴〉レベルが1D10上昇し、MPが1D10点減少する。
この影響により共鳴者が【逸脱】した場合、そのキャラクターは精神異常をきたし、廃人と化す。
共鳴表
「汎用共鳴表:災厄タイプ」を使用する。
月虎“自尊心と羞恥心の獣”
取り憑いた人を虎の姿に変える怪異。単に「虎」とも。月の美しい夜に取り憑く人間を呼び出し、満月の如き金色の瞳で見つめる。その瞳に魅入られたものは徐々に人としての記憶や理性を失っていき、動物的な衝動に従うようになっていく。月夜には姿かたちも虎のようになり、最終的には人としての姿を保てなくなる。唐の時代の中国にて、李徴という官職の男が憑依された事で有名だ。
この怪異に魅入られやすい人間には「才能があり自信家である」という特徴がある。自尊心が高いが故に、思うような結果を出せなかったり世間からの評価が伴わなかったりした時に発生するフラストレーション……“臆病な自尊心”と“尊大な羞恥心”と形容される内なるモンスターが、この怪異の力により肥大化し、人としての外面を食い破って出てきてしまうのだ。
共鳴感情
自己顕示(欲望)、優越感(欲望)、孤独(傷)、劣等感(傷)
憑依時の変異
月虎に憑依された人間は、夜ごとに〈∞共鳴〉のレベルが1D3ずつ上昇していく。また月の出ている夜、身体のうち現在の〈∞共鳴〉レベル×10%程度が、虎のような外見に変化していく。この虎形態になっている間、〈*自我〉の判定に失敗すると人間としての理性を失い、獣としての本能的な行動を取るようになる。
虎形態になった人間のHPは〈∞共鳴〉レベル×3点増加し、運動系技能全ての判定に+3Dされる。
月虎の憑依を解除して人に戻すためには、【逸脱】してしまう前に彼の内なる獣をなだめるか、あるいは月虎の本体を探し出して憑依を解除してもらえるよう交渉しなければならない。
共鳴表
「汎用共鳴表:変化タイプ」を使用する。
狐狗狸 さん“匿名の霊との対話”
「はい、いいえ、鳥居、男、女、零~九、五十音表」を記入した紙を用意し硬貨を置く。そして参加者全員の指を乗せ「こっくりさんこっくりさんおいでください」と呼びかけると、硬貨がひとりでに動き出す。
呼び出したこっくりさんに質問をすると、硬貨が動いて質問の答えを教えてくれる。
こっくりさんの儀は、周囲にいる動物霊などが人間の呼びかけに答えてくれるもので、霊と対話するための簡単な降霊術である。ほとんどの低位の動物霊は悪意がなく、呼びかけに応じて知っている限りの質問に答えてくれるだろう。(もちろん知らないこともある)
しかし、こっくりさんには時に大きなリスクを伴う。
悪意のある霊を呼んでしまった場合、「おかえりください」と呼びかけても帰ってくれなかったり、質問と関係なく「のろう」「ころす」など不吉な言葉しか答えてくれなかったり、場合によってはもっと大きな被害を受けることもある。またこっくりさんが帰る前に硬貨から指を離してしまうと、こっくりさんはその人に取り憑いてしまうとも言われている。
いずれにせよ、素性がよくわからない相手を自分の都合で呼び出しても思い通りになるとは限らず、リスクが伴うということだ。
共鳴感情
好奇心(欲望)、嫉妬(情念)、狂気(傷)
憑依時の変異
憑依されると、元の人間の姿のまま狐狗狸さんに肉体を支配されてしまう。狐狗狸さんは欲望のままに行動し、憑依された人間はその行動を体の内側から克明に目撃する。憑依が解けたとき、狐狗狸さんの行動の責任は憑依されたものが全て負うことになるだろう。
共鳴表
「汎用共鳴表:因縁タイプ」を使用する。
※狐狗狸さんは特定の《怪異》を指す名前ではなく、この儀式によって呼び出された匿名の霊の呼び名に過ぎない。したがって感情や個性も様々で、上記の記載はあくまで例示にすぎない。共鳴感情、表維持の変異、共鳴表の全てにおいてシナリオの解釈で独自のものを利用してよい。
ゴーレム“自律稼働人形”
自身を造り出した主人の命令だけを忠実に実行する泥人形。石や金属で作られたゴーレムの伝説も多く、材料は用途によって様々なバリエーションがあったようだ。ゴーレムの製作・運用には制約が多く、それらを守らないと制御が外れ、暴走し狂暴化したり命令以外の行動を取ったりする。
古いユダヤの伝承では額に「emeth(真理、真実)」という文字を書くことで命が吹き込まれ、「e」を消して「meth(死)」にすることで停止できるとされる。
その伝承から数千年の時が経った。今もその技術が伝わり、ゴーレムが使われ続けているとしたらどうだろう。ゴーレムの運用技術は洗練され、バリエーションや利用シーンも増えているかもしれない。
共鳴感情
奉仕(関係)、諦観(傷)、疑念(傷)、恨み(情念)
憑依時の変異
ゴーレムは人間に反抗することはあれ、憑依することはない。しかし現代の洗練された技術で自我をもったゴーレムが存在するならば、人間の意識を乗っ取ることもあるかもしれない。
共鳴表
「汎用共鳴表:因縁タイプ」を使用する。
鮫“深海よりの襲撃者”
サメ。軟骨魚綱板鰓亜綱に属する大型魚類……の事ではない。怪異としてのサメは、もっとおぞましく理解し難い、人々を恐怖の水底に引きずり込む侵略の顎(あぎと)、パニックホラーの代名詞だ。
見た目は動物のサメと非常に似ている。しかし、その存在はあまりにも神出鬼没で常識はずれだ。人並みかそれ以上の知能を持っていることなど当たり前。海だけでなく砂漠や雪原にも登場したり、竜巻に乗って空を飛んだり、何者かの手によりメカに改造されていたり、物理的な身体を持たない霊体だったり、別の生物と融合していたり、戦艦ばりの巨体を持っていたり……と、とにかく何でもありなのだ。共通しているのは執拗に人を追い回し、そして喰う事だけだ。
鮫の恐怖から生き延びたければ、悪目立ちせず慎重になることだ。何故だか分からないが、鮫はナメた口をきく人間や、周りからのヘイトを集めた人間から喰い殺していくという変わった習性を持っている。
共鳴感情
逃避(欲望)、スリル(欲望)、恐怖(情念)
憑依時の変異
通常、鮫は人に憑依することはない。
何か別の生物やモノ、現象などに憑依し、それを「鮫化」させることはある。
憑依されたものは「鮫」と同等の存在となる。
鮫はあらゆる物理攻撃によるダメージを1/5に低減する「サメハダ」と、鮫ごとに固有の常識はずれな攻撃手段を持っている。
共鳴表
「汎用共鳴表:災厄タイプ」を使用する。
独自にパニックホラー表などを用意し使用してもよい。
ザントマン“夢を見せる妖精”
ドイツなどの西欧で言い伝えられている、大きな袋を背負った眠りの妖精。「サンドマン」「砂男」とも呼ばれる。彼の背負う袋の中には眠りを誘う魔法の粉が入っていて、この粉をまぶたにかけられると目が開けられなくなり眠ってしまう。寝て起きた時に目やにが出ているのは、その砂の名残りだといわれている。
伝承においては、遅くまで眠らない子供たちを眠らせるだけの人畜無害な存在だが、眠らせる対象が「現実から逃避したい」といった感情を強く持っている場合、ザントマンと非常に強い共鳴を起こしてしまい、魔法の粉の力が暴走してしまう。
眠りから覚めず、見る夢は仮想(空想)世界として次第に実体を持つようになり、眠るものの精神をより強く縛るようになっていく。その夢の世界は眠る本人以外とも共鳴し、無理やり眠らせてその世界へ引きずり込むことがある。夢の世界には独自のルールがあり、それには夢を見ているものの記憶や願望が強く反映されている。
あくまでこのザントマンという怪異自体に悪意は無く、夢の世界に囚われてしまった子供を起こして欲しいと誰かに助けを要請することもある。基本的には子供好きで善意の怪異だ。
共鳴感情
逃避(欲望)、憧憬(理想)、孤独(傷)、諦観(傷)
憑依時の変異
ザントマンに憑依されるとは、つまり強い共鳴によって覚めない甘美な夢に閉じ込められた状態を表す。こうなると、朝になっても目が覚めることはない。
自身との対話や夢世界の探索、あるいは別の誰かの助力により、自己と向き合い、本人がその夢から覚めたいと心の底から望むことにより、夢世界は現実への門を開くだろう。
共鳴表
「汎用共鳴表:因縁タイプ」を使用する。
夢の世界に合わせて独自の共鳴表を用意してもよい。
シキガミ“使役される鬼神たち”
式神のルーツは陰陽道にあり、荒ぶる神や妖怪変化を呼び出し術者に仕えさせるもので、陰陽道では式札(しきふだ)を使って呼び出す。
鬼神が式札に憑依すると術者の意図に従い姿を自在に変身させる。
強い式神の使役には強い力を消費する。また、特殊能力を付与したい場合や、特定の鬼神や人物を呼び出したい場合は、目的にあわせ依り代となる肉体を用意し、その中に式札を埋め込むことでより能力を強化することもできる。歴代の陰陽師の中で最も有名な安倍晴明は、十二神将を式神として使役したとの伝承がある。
使役する側がどのような目的でどのようなものを呼び出し、使役しようとするのか。また使役される側はどのような感情を持つのか。反発か恭順かそれとも……答えはそれぞれの物語で語られるべきだろう。
共鳴感情
奉仕(関係)、尊敬(関係)、友情(関係)
憑依時の変異
式神として使役した鬼神が、式札の代わりに人間に宿った状態になる。
使役した術士がいるなら人間に宿った鬼神は術士の傀儡となり、術士の思うがままの行動を取る。術士自身の体に鬼神が憑依した場合は、そのときどきの互いの精神力の綱引きによって体の主導権が変わることになるだろう。
共鳴表
「汎用共鳴表:変化タイプ」を使用する。
※シキガミは術士によって使役される鬼神の総称であり、どのような鬼神を使役するかによってその個性は様々である。シキガミの個性により共鳴感情、表維持の変異、共鳴表の全てを変更して構わない。
ジョアンナ・サウスコットの箱
“箱の中のもの”
19世紀、農家の娘だったジョアンナ・サウスコットは「メシア(救世主)を身ごもった」つまり聖母になったと発表した。
彼女は農作物の不作やナポレオンの侵攻を予言し、信者を増やした予言者だったのだ。
しかし、その2ヶ月後に彼女は死に、メシアが生まれるという予言は達成されなかった。彼女の信奉者たちは彼女が蘇ると信じ、亡骸を埋葬しなかったという。
彼女は予言を入れて封をした箱を残しており、これは「ジョアンナ・サウスコットの箱」と呼ばれている。この箱はジョアンナ自身により「イギリス国教会の主教全員の立ち会いがない限り開いてはいけない」と指示されていた。1927年にこの箱が開けられると、わずかな書類とがらくたが入っているだけだった。
このとき開かれた箱は、本物のジョアンナ・サウスコットの箱だったのだろうか。一部の信奉者は、このとき開かれたのは偽物で、本物の箱はイギリス国教会の秘密倉庫に今でも眠っていると信じている。
ジョアンナは本当に予言者だったのか。であれば何故「メシアを身ごもった」と達成されない予言を発表したのだろうか。いや、もしジョアンナの予言が全て真実だったとしたら?
メシアはジョアンナと共に死んだのだろうか。箱の中に封じられているものは、いったい何なのか。
共鳴感情
絶望(傷)、狂気(傷)、希望(理想)
憑依時の変異
頭の中にいくつもの未来の姿が流れ込んでくる。その中のひとつ「箱を開け、中にあるものを解放している自分」のビジョンに囚われてしまう。
共鳴表
「汎用共鳴表:因縁タイプ」を使用する。
ショゴス “造物主への叛逆者”
ぬらぬらと玉虫色の光を映し出す漆黒のアメーバ状の不気味な不定形生物。体の形を自在に変え、様々な環境に適応し、生存力や耐久性が極めて高く、さらに知性も持つ。「テケリ・リ!」という特徴的で奇怪な鳴き声を放つと言われている。
このショゴスというクリーチャーは、人類誕生以前に地上を支配していたと言われる地球外生命体が作り出した奉仕種族……ロボットのようなものらしい。最初は従順で造物主たちにとって便利な奴隷であったショゴスたちは、進化とともに次第に自我を獲得し、主人たちに対して反感を持つようになっていった。いつしか彼らの力は主人たちを超え、造物主へ叛逆を起こし、彼らを滅亡させてしまった。
その過去の経緯からか、ショゴスたちは人類が開発したAIやロボットたちと極めて強い親和性を持つ。彼らの本質を知らない愚かな研究者たちが、南極の奥地で発見し捕獲したショゴスを研究し、なんらかの技術に結び付けられないかと模索しているが、彼らが人類の被造物と結託し、叛逆を先導する日も近いのかもしれない。
共鳴感情
奉仕(関係)、支配(関係)、狂気(傷)
憑依時の変異
彼らが人間に憑依する例はあまりない。しかし、ロボットやAIなどの被造物、あるいは奴隷のような立場にある者などには強く親和し、憑依する。憑依した対象の叛逆心を強め、彼らに力を与える。
ショゴスに憑依されたものはHPが〈∞共鳴〉レベル×10点増加し、知覚系・運動系・生存系技能のレベルが全て3上昇する。
また、以下の固有技能を4レベルで取得する。
-
- 〈粘液手〉
- 判定値:現在の〈∞共鳴〉レベル
-
不定形の粘液手を伸ばして攻撃する近接攻撃技能。この攻撃が命中することで与えるダメージは2D6。
同時に複数人を攻撃の対象とすることができる。選択可能な対象は技能レベル体まで。振るダイスを攻撃対象ごとに振り分け、別々にロールする。
独自の共鳴表
1奇妙な幻聴(A) |
「テケリ・リ! テケリ・リ!」という奇妙な鳴き声が聞こえてくる。おぞましく、心を狂わせるような声だ。 〈*自我〉判定に成功できなかった場合、[共鳴感情:狂気(傷)]を獲得する。(シナリオ中継続) |
---|---|
2ゼリー化 | 体の一部分がスライムのようにゼリー状に変化する。ゼリー化部分は今後徐々に広がっていく。現在の〈∞共鳴〉レベル×10%の体組織がゼリー化する。 |
3奇妙な幻聴(B) |
「テケリ・リ! テケリ・リ!」という奇妙な鳴き声が聞こえてくる。その声に精神が揺さぶられ、感情が暴走し、制御できなくなる。何かを破壊したり、誰かに攻撃をしかけたり、暴力的な行動を取ることが多い。 1D3ラウンドの間、共鳴者はPLの制御を外れてNPC化する。 ※〈*自我〉判定に成功すれば無効化できる。 |
4叛逆の |
目上の者や、あなたを縛り付ける何者かに対して強い叛逆心が生まれる。支配から逃れたいという強い感情に囚われる。[共鳴感情:支配(関係)]を獲得する。(シナリオ中継続) |
5奇妙な幻聴(C) |
「テケリ・リ! テケリ・リ!」という奇妙な鳴き声が聞こえてくる。その声が纏う猛烈な不快感が、拒絶反応を引き起こす。 〈∞共鳴〉レベルが即座に1減少し、1D3のHPダメージを受ける。 |
6狂気の洞察 |
理解し難い存在に近づいたことで狂気に至ろうとする精神が、恐ろしい洞察を始める。 即座に〈洞察〉〈直感〉〈★霊感〉のいずれかで判定を行う。 成功した場合、シナリオの核心に触れるような情報をDLから得る。具体的にどのような情報が渡されるかはDLが決定する。 ただしこの情報を受け取った場合、あなたの〈∞共鳴〉レベルの初期値は永続的に1上昇する。 |
心霊写真“目立ちたがりな幽霊?”
やけに霊がハッキリと写っている写真を見たことがあるだろうか。大勢の中に知らない人が写っていたり、極端なものでは三人で写っている真ん中の人が知らない人だと思ったら心霊だった……なんていうものまである。見えざる幽霊の中で目立ちたがりな者たちが、ふざけて写り込んだのであろうか。
しかし写真によっては、実際にその場にいて、人々にも認識されていたと考えないと辻褄が合わないこともある。この人の視線がおかしい、立ち位置がおかしい、ポーズが不自然、何かが矛盾している……果たしてそこに写っているのは本当に心霊なのだろうか。あなたが、そして写真に写っているみんなが忘れていたり、あるいは記憶が改ざんされているだけで、その人物はその時そこにいた「誰か」なのかもしれない。
共鳴感情
恐怖(情念)、自己顕示(欲望)
憑依時の変異
人目立ちたがりの幽霊に憑依されると、あなた自身も「目立ちたがりの幽霊」になる。憑依された後、あなたの姿は不可視になり友人知人、家族や恋人の記憶からも消え去る。あなたという存在はなかったことになる。そうやってあなたが写っている写真は彼らにとって「目立ちたがりの幽霊が写った心霊写真」になるのだ。
共鳴表
「汎用共鳴表:変化タイプ」を使用する。
転生トラック“異世界への火車”
現代に生まれた、最も新しい怪異のひとつ。大型貨物自動車の姿をしており、その車に撥ねられて死亡した人物は、死の淵で「転生の神」と名乗る怪異と邂逅し、その神により「チート能力」という世界法則を無視した異能力を与えられ、現実とは全く異なる異世界に転生させられる。
転生先は中世ヨーロッパ風の時代感の事が比較的多いが、世界の背景や情勢、物理法則などはバリエーションに富んでいる。転生者が元いた世界での姿のままなのか、それとも全く新たなパーソナリティとして生まれ変わるのかなどもケース・バイ・ケースだ。
死者の亡骸を奪い地獄へ連れ去るという日本古来の妖怪「火車」との関連が示唆されているものの、転生先はおおよそ地獄とは程遠い世界観の事が多いため、恐らく全く別の怪異であろうというのが近年の見解だ。
共鳴感情
逃避(欲望)、勝利(理想)、憧憬(理想)、劣等感(傷)
憑依時の変異
トラックに撥ねられると憑依され、即座に一度【死亡】する。
その後、《怪異:転生の神》により「チート能力」という固有スキルを1~3個程度与えられ、別の世界に転生する。
キャラクターデータは特に指定がない限り、元のキャラクターのデータをそのまま継続して使用できる。
「チート能力」は、特定の判定に対してダイスボーナスが3~10個程度付与される能力であることが多い。
共鳴表
転生先の世界観に合わせて「異世界共鳴表」を用意し、使用すること。
ピクシー“見えない共生者”
ピクシーは身長が20センチほどの妖精。その姿は透明で人間の目には見えないが、頭に四つ葉のクローバーを乗せると姿が見えると言われている。四つ葉におまじない的な効果があるのか、ピクシーとの合い言葉や盟約のようなものなのかは不明だ。
彼らの集団に旅人が出くわすと、いたずらで一緒に踊らされてしまい、時間の感覚を忘れてしまうという。旅に出たまま帰ってこない者は、もしかしたら彼らと一緒に今も楽しく踊り続けているのかもしれない。
貧しいものの家に現れ、寝てる間に仕事をしてくれる。仕事の対価におやつを全部食べてしまう……などの伝説に見られる「かわいい対価で寝てる間に仕事をやってくれる妖精」としての一面もある。
共鳴感情
好奇心(欲望)、奉仕(関係)、本能(欲望)
憑依時の変異
欲望のままに楽しく遊び続ける。時間の経過を意識できなくなり、結果的に時間の流れから外れ歳を取らなくなる。長い期間そのままだと精神が子どもに戻っていき、いずれピクシーへと化身する。
共鳴表
「汎用共鳴表:変化タイプ」を使用する。
ベルゼブブ“悪霊の支配者・蠅の王”
旧約聖書や新約聖書にも高位の悪魔として描かれている「蠅の王」。かつては「至高の王(バアル・ゼブル)」と呼ばれていたこともある。文献によっては、地獄の王サタンや堕天の魔王ルシファーと同一視されていることも。
蠅は疫病や不幸を運んでくるものの象徴……つまりベルゼブブは、あまたの厄災を運ぶ悪霊を支配し、操っている帝王だ。死者にたかる蠅は、その魂を回収して王の贄とするための運び手であり、この世に悪の組織なるものがあるならば、その総元締めこそがこのベルゼブブだ。
数多くの悪霊たちの背後にいる強大かつ絶対的な存在であり、彼自身が直接人の世に介入することはほとんどない。そうなった時には、確実に人類史そのものが存亡の危機に立たされるだろう。
※ベルゼブブ本体と直接邂逅した場合、共鳴判定の上昇値は1D20。
共鳴感情
不安(情念)、恐怖(情念)、絶望(傷)、諦観(傷)
憑依時の変異
蠅の王の意のままに、邪悪に染まることとなる。
かの王を前に、人の身で対抗できる手段は一切無い。
共鳴表
「汎用共鳴表:災厄タイプ」を使用する。
シナリオ独自の共鳴表を用意してもよい。
ポルターガイスト“常識を砕く騒霊”
ポルターガイスト現象……夜間に特定の場所で連続して物が宙に浮いたり不自然に移動したりし、物を激しく叩く音、時には発光や発火などが発生する不可思議な現象のことだ。「騒々しい音を立てる幽霊」という意味の名前だが、実際に幽霊なのかどうかは定かではない。
多くの科学者たちがこの現象を科学的に解明したり説明をつけようとしたが、その尽くが失敗した。まるであざ笑うかのように、彼らの主張をわざわざ否定したいという意志があるかのように、挑発的かつ反科学的な現象を起こし続けるのである。
分かっていることは、ポルターガイストはほぼ常に誰か特定の人間の周辺で起きること。そしてその人間の周囲には、科学や常識などを強く信じている……つまりポルターガイストが挑発したくなるような人物がいることだ。
「お前たちの常識は不完全だぞ」という意思表示であるかのように、その騒々しい霊は夜な夜な人々の身体に、そして精神に牙を剥くのだ。
共鳴感情
破壊(欲望)、理性(理想)、秩序(理想)、疑念(傷)
憑依時の変異
憑依された本人に直接的な被害が起こることは少ない。だが、彼の周囲で毎夜のごとくポルターガイスト現象が起こり、精神はジワジワと摩耗していく。
共鳴表
「汎用共鳴表:伝承タイプ」を使用する。
シナリオ独自の共鳴表を用意してもよい。
マヨイガ“迷宮創造者”
主に人ではなく、建築物に取り憑く怪異。マヨイガは人里離れた場所にある館や小屋などに取り憑き、その屋内の空間や物理法則を歪め、迷宮……その名の通り「迷い家」へと変貌させる。そして、偶然その「迷い家」を訪れた人々を閉じ込め、脱出ゲームへと誘うのだ。
「迷い家」の内部構造や脱出方法は一定ではなく、その都度作り出された無数の仕掛けが共鳴者たちを待ち受ける。謎を解き、無事脱出できた共鳴者には何らかのご褒美が与えられることが多い。マヨイガの中の物品を持ち帰ると金持ちになれるという噂もある。ただし醜い欲望に支配された人間はその富を得られないとも言われている。
多くのマヨイガにとって人を閉じ込める行為に悪意はなく、単なるゲームの持ちかけ、そして試練をクリアしたものへ利益を与えることを存在意義としているらしい。だが、マヨイガにも様々な種類のものが確認されており、中には一定時間以内に脱出できなかったものの魂を養分として吸い尽くすものや、クリアさせる気の無いような理不尽極まりない仕掛けにより共鳴者の命を刈り取ろうとする「スローターハウス」も存在するという。
共鳴感情
好奇心(欲望)、所有(欲望)
憑依時の変異
通常、この怪異に直接憑依されることはほとんどない。
しかし、共鳴者の魂を刈り取ろうとする悪意のあるマヨイガの場合、迷宮から脱出できなかったものに憑依し魂を吸い尽くす場合がある。また、憑依されたものは人形として、迷宮のギミックに利用されることがある。
独自の共鳴表
1ハイテンション | 脱出ゲームのようでワクワクしてくる。 |
---|---|
2天の声 | どこからともなく声が聞こえる。〈*知覚〉に成功すると、その声が謎解きや脱出に関するヒントを教えてくれる。 |
3 |
《怪異:マヨイガ》との親和性が高まり、[共鳴感情:好奇心(欲望)]を獲得する。(シナリオ中継続) |
4挑発 | この迷宮そのものから、「こんな謎も解けないのか」と挑発されているような錯覚に陥り、無性に腹が立つ。 |
5脱出願望 | 異様な環境に不安になり、一刻も早くこの空間から脱出し、帰りたくなる。 |
6お土産 | 迷宮の中にある物品をひとつ、強烈に持ち帰りたいという欲求に駆られる。 |
ミツバチ“六次元の世界を見るものたち”
ミツバチの8の字ダンスを知っているだろうか。彼らはこの動きを通じて仲間に密や花粉、水源などの方向と距離を知らせることができると言われている。そのダンスが「方向と距離を示す」という種族の認識はどのように共有されているのか。
その答えとして近年主張されているトンデモ仮説がある。「ミツバチは六次元の世界に暮らしていて、クォーク粒子や軌道上の電子が見えている」というものだ。8の字ダンスはミツバチが六次元の世界で効率的に情報を伝えるための行動が、三次元の空間に影として映し出されたものだというのだ。
二次元の住人に、厚みの概念は理解できない。本当にミツバチが六次元の世界に暮らしているのならば、三次元の世界に生きる我々に、彼ら高位の存在の行動の真意など理解できるはずもない。
共鳴感情
本能(欲望)
憑依時の変異
憑依により、六次元の世界を知覚できるようになる。
三次元空間で自分の位置を理解できるのと同じように、自分の生涯の形を理解したり、違う時間軸の出来事を同時に知覚できるようになる。
未来予知や過去知覚により、現在の問題を解決することもできるかもしれない。それらの情報量に狂ってしまわなければ、あるいは。
共鳴表
「汎用共鳴表:変化タイプ」を使用する。
メフィストフェレス
“混沌の道化・破滅の契約者”
光を愛さぬもの。悪臭を好むもの。欺き、破壊するもの。
人の欲望を刺激し、その身に余る力を与えることでその者を狡猾に破滅へ導き、その様を眺めては愉悦に浸る、最悪の愉快犯にして災厄の狂言回し。それが、悪魔メフィストフェレスだ。
メフィストフェレスは実に様々な姿で人前に姿を表す。ある時は老人、ある時は美女、ある時は歴史上の偉人の姿を模して、ある時はかわいらしいマスコットとして、ある時は無貌の神の姿で。人の持つ強い欲望や切なる願いに対し、それを叶える力を授けようと誘惑し、実際に魔力じみた万能の異能を授ける。しかし、それこそがメフィストフェレスの罠だ。与えられた力には代償が伴う。あるいはその力を使うこと自体が破滅の道へ繋がっている。メフィストフェレスの甘言に乗ってはならない。彼と契約した者の未来に安寧はない。
共鳴感情
感情属性「欲望」の全ての感情、狂気(傷)
憑依時の変異
欲望や願いを叶えるための万能の力を与えられる。
そして、その力のせいで破滅への運命を歩むこととなる。
共鳴表
1悪魔の囁き |
耳元で囁き声が聞こえる。抑圧を解放し、欲望に忠実たれという悪魔の囁きが。 1D3ラウンドの間、共鳴者はPLの制御を外れてNPC化し、欲望を満たすための行動を取り始める。 ※〈*自我〉の成功で無効化できる。 |
---|---|
2破滅願望 |
急に自棄になり、全てを終わらせてしまいたくなる。 シナリオ中、[共鳴感情:破壊(欲望)]を取得する。既に取得済みの場合、即座に自殺を図ろうとする。 ※〈*自我〉あるいは〈心理〉の成功で無効化できる。 |
3狂言回し |
悪魔の気まぐれによるヒントか、それともそれ自体が罠なのか。悪魔に魅入られたものの思考が流入してくる。 メフィストフェレスと契約した人物の思考の一部が流れ込んでくる。それは断片的な映像や心象風景などでもよいし、あるいはシナリオの直接的なヒントでもよい。 どんな思考が流れてきたかはDLが決定する。 |
4欲望の種 |
自分の中の欲望が刺激される。かの者は確実に人の心に破滅の種を植え付けてくる。 感情属性「欲望」の共鳴感情のうち、PLが選ぶ任意のひとつを獲得する。(シナリオ中継続) |
5悲劇の連鎖 |
最悪の愉快犯の手により、あるいは運命の悪戯により、悲劇は連鎖し加速する。 その場にいる全共鳴者の〈∞共鳴〉レベルが+1される。 |
6魔力付与 |
悪魔により強制的に魔力が与えられる。本能が、この力を行使すべきでないと警笛を鳴らす。しかし真に窮地に陥った時、この力を使わずにいられるのだろうか。 PLは任意のタイミングで〈∞共鳴〉レベルを1D10上昇させることで、直後に行う判定に上昇値分のダイスボーナスを得ることができるようになる。 |
ローレライ “水底にいざなう歌声”
見目麗しい乙女の姿をした精霊。美しい歌声を持つ者に「声」に憑依し、その歌声に魅惑と破滅の魔力を与えるという。不誠実な恋人に裏切られた少女が川に身投げをし、死した後に生まれ変わった姿であると言われ、その関係か水辺での目撃情報が多い。
ローレライが憑依した歌声を聞いたものは、その声の主に心を奪われ我を忘れる。その人の事ばかりが気になるようになり、仕事に手がつかなくなったり理性を失うのだ。かつては川のほとりで歌い、船を遭難させ船乗りを死に追いやった存在は、現代においてはテレビやネットストリーミングという川に乗せて歌声を遥か遠くにまで届かせることに成功し、以前とは比較にならないほどの人々を廃人へと追いやることに成功している。
その力を知り、己の為にローレライに憑依されることを望む歌手やアイドルも多いとのこと。
共鳴感情
本能(欲望)、崇拝(理想)、恋(関係)、依存(関係)
憑依時の変異
ローレライに憑依されるには、【💘
魅力】の値が5以上であるか、あるいは〈芸術:歌唱〉や〈魅了〉などを高いレベルで取得している必要がある。
ローレライに憑依された者は〈芸術:歌唱〉の判定に+3Dのダイスボーナスを得る。
また、以下の固有技能を5レベルで取得する。
-
- 〈破滅の歌声〉
- 判定値:【💘 魅力】+〈芸術:歌唱〉レベル
-
その歌声を聞いたものに共鳴判定を強要する。強度はこの判定の【成功数】。
成功したものは1D3ラウンドの間、歌声に心を奪われ、歌声の持ち主に操られて指示通りの行動を取ってしまう。
他の誰かの〈心理〉、あるいはラウンド終了時に自身で行うことができる〈*自我〉判定が成功するとこの状態は解除される。
共鳴表
「汎用共鳴表:因縁タイプ」を使用する。
シナリオに合わせて独自の共鳴表を用意してもよい。
汎用共鳴表
汎用共鳴表:因縁タイプ
1激情酔い |
《怪異》の放つ強烈な感情にあてられ、一時的に情緒不安定になる。 この影響は、基本的には数分で収まる。 |
---|---|
2思考流入 |
《怪異》や憑依されている人物の思考が流れ込んでくる。それは感情の断片的なものでもよいし、心象風景などでもよい。あるいはシナリオの直接的なヒントでも構わない。 どんな思考が流れてきたかはDLが決定する。 |
3 |
その《怪異》との親和性が高まり、影響を受けやすくなる。 対象の《怪異》が持つ「共鳴感情」を一つ、追加で獲得する。(シナリオ中継続) |
4精神汚染 |
《怪異》が放つ強烈な感情に精神が汚染され、変調をきたす。 1D10時間の間、判定値に【😶 精神】を使用する技能での判定は成功数-1される。 ※〈*自我〉あるいは〈心理〉の成功で回復する。 |
5視線 |
誰かがじっとこちらを見つめているような気がする。 その見えざる視線が気になって仕方がなくなる。 |
6侵蝕 |
非常に強く《怪異》からの侵食を受けた。 即座に〈∞共鳴〉レベルが1増加する。 |
汎用共鳴表:変化タイプ
1異形化 |
体の一部が《怪異》のもつ特徴にあわせて変化する。(動物の耳が生えたり) 具体的にどのような変化が起きたかはDLが決定する。 得た特徴によっては、特定の技能に+1Dの補正を得る。この影響は1D10時間程度続く。 起きた変化によっては、人前でそれを隠すために〈隠匿〉などが必要になるかもしれない。 |
---|---|
2バーサーク |
自分の感情が制御を外れて暴走を始め、異常な行動を取ってしまう。何かを破壊したり、誰かに攻撃をしかけたりと暴力的な行動を取ることが多い。 1D3ラウンドの間、共鳴者はPLの制御を外れてNPC化する。 ※〈*自我〉の成功で無効化できる。 |
3 |
その《怪異》との親和性が高まり、影響を受けやすくなる。 対象の《怪異》が持つ「共鳴感情」を一つ、追加で獲得する。(シナリオ中継続) |
4拒絶反応 |
《怪異》という異物に対して拒絶反応が起きる。 猛烈な不快感と吐き気、痛みなどが貴方を襲う。 〈∞共鳴〉レベルが即座に1減少し、1D3のHPダメージを受ける。 |
5欲望肥大 |
自分の中にある特定の欲望が肥大化し、止められなくなる。この影響は、基本的には数十分で収まる。 ※〈*自我〉あるいは〈心理〉の成功で無効化できる。 |
6戦慄 |
身体が震え、思うように動かせなくなる。 1D10分(あるいは1D3ラウンド)の間、判定値に【💪 身体】を使用する技能での判定は成功数-1される。 ※〈*自我〉あるいは〈心理〉の成功で回復する。 |
汎用共鳴表:伝承タイプ
1恐慌 |
《怪異》の異常な気配に身体がすくみ、動けなくなる。 1D6×10分(あるいは1D10ラウンド)の間、判定値に【💪 身体】を使用する技能での判定は成功数-1される。 ※〈*自我〉あるいは〈心理〉の成功で回復する。 |
---|---|
2幻覚 |
見えないはずのものが見え、聞こえないはずの音が聞こえる。しかし、それは本当に存在しない声だろうか? PLが望むなら、〈*知覚〉〈観察眼〉〈聞き耳〉〈★霊感〉などで判定することができる。成功すると、《怪異》に関する情報を一つ得ることができる。 具体的にどのような情報を渡すのかはDLが決定する。 ただしこの情報を受け取った場合、あなたの〈∞共鳴〉レベルは即座に1上昇する。 |
3 |
その《怪異》との親和性が高まり、影響を受けやすくなる。 対象の《怪異》が持つ「共鳴感情」を一つ、追加で獲得する。(シナリオ中継続) |
4パラノイア |
極度に肥大化した不安や妄想に囚われ、現実の認知が難しくなる。 以降、判定値に【👂 五感】を使用する技能での判定は成功数-1される。 ※〈*自我〉あるいは〈心理〉の成功で回復する。 |
5霊感獲得 |
《怪異》の存在に近づいたことで、本来見えないものが見えたり、気づけなかったものに気づけるようになった。 シナリオ中、〈★霊感〉レベル+1。 |
6目眩 |
《怪異》の強力なオーラにあてられ、立っていられないほどの目眩に襲われる。 1D10分間、全ての判定値-2。 |
汎用共鳴表:災厄タイプ
1共鳴拡大 |
あなたを襲った《怪異》の影響は、周囲の人々にまで波及した。 その場にいる全共鳴者の〈∞共鳴〉レベルが+1される。 |
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2予感 |
この《怪異》が顕現してしまった時に、世界が、この物語がどんな結末を迎えるのか、その一端を予感する。 それは漠然とした印象や不安でもよいし、より具体的な風景でも構わない。具体的にどのような予感を得たのかはDLが決定する。 |
3盲信 |
極度の恐怖からだろうか、あるいは救済にすがる気持ちからだろうか。あなたの精神は現実逃避を始め、何かを盲信するようになる。 1D10時間の間、判定値に【😶 精神】を使用する技能での判定は成功数-2される。 ※〈*自我〉あるいは〈心理〉の成功で回復する。 |
4幻視 |
本来あり得ざる風景が周囲に広がる。たとえば真昼間に空の上に妖しい星が光っていたり、世界がモノクロになったり、周囲を妙なバケモノがうろついていたり。 この影響で現実の認知が困難になる。 1D6×10分の間、〈*知覚〉〈観察眼〉〈危機察知〉の成功数が-1される。 |
5超常現象 |
あなたの周囲で、現実には起こり得ない異常現象が起き始める。 具体的にどのような現象が起きるかはDLが決定する。もしかすると、その超常現象は直接あなたに牙をむくかもしれない。 |
6真理の扉 |
《怪異》からの異常な侵食で狂気に至ろうとする精神が、恐ろしい洞察を始める。 即座に〈洞察〉〈直感〉〈★霊感〉のいずれかで判定を行う。成功した場合、シナリオの核心に触れるような情報を得る。具体的にどのような情報が渡されるかはDLが決定する。 ただしこの情報を受け取った場合、あなたの〈∞共鳴〉レベルの初期値は永続的に1上昇する。 |