メロディック・ディスコード
——エモクロア—— 人ならざる超常の存在。
共鳴により人の感情に変異を及ぼし、不可思議な事件を巻き起こす存在。
怪異を追い、怪異を利用し、怪異を撃ち砕け。
三つの組織が交錯し、Discordが鳴り響く――。
この世界には共鳴者と呼ばれる『物語に共鳴し事件の当事者となった人物』の他に、怪異を知覚し、様々な目的のために怪異と関わっている組織が存在する。
メロディック・ディスコードはそれらの組織の一部を紹介して、『エモクロアTRPG』の世界を更に楽しむ目的で作られた。
シナリオ作者やディーラーは、ここに収録されている組織や怪異の設定の一部、または全部を使って新たなシナリオを作成することができる。
なお、このページに収録されている組織は「エモクロアTRPGの世界に必ず存在するもの」ではない。
このページの設定をシナリオ内に採用することも採用しないことも、あるいはエッセンスだけを用いた新たな組織を創出することも、シナリオ作者やディーラーの自由である。
目次
世界観
メロディック・ディスコードに登場する3つの組織を紹介する。
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- 警察庁警備局特異対策課
- 警察組織におけるエモクロア対策班、通称『特異対』。
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- LKS警備保障株式会社
- 民間の警備会社を装ったエモクロアの研究機関。
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- 赤ノ目
- 謎の老婆を教祖とした、蛇神を崇めるカルト教団。
特異対は警察庁の組織であり、全都道府県に支部を置いている。いずれの地域においても、大規模な特異事件が起これば必ず特異対の目に留まるだろう。
彼らは怪異専門の特殊作戦部隊を擁し、
人知れず《怪異》事件の対処や後始末を行っている
TIPS
わたしたちのいる現実と同じように、多くの人々は《怪異》がそこにいることを認識してはいません。
特異対は秩序を重んじる組織のため、《怪異》の存在を秘匿したまま対処しています。
。
組織の規模は中程度だが圧倒的な財力を持つのがLKSだ。背後には強力なバックアップがあり、《怪異》を営利目的で利用しようと日夜研究を行っている。
政治家や海外の大企業にも太いコネクションがあり、多少の事件は闇に葬られるだろう。
この中で、最も破壊的な組織が赤ノ目である。100年以上の歴史を持ち、時代を問わず常に千人を超える狂信的な信者を擁している。
彼らはみな組織の目的のためなら自身の命を捨て、他人を犠牲にすることができる。
上層部の人間は既に怪異化しているとさえ言われるが、真相は誰にもわかっていない。
これら3組織は特に規模が大きく、それぞれが関わる怪異事件も多い団体だ。
特異対とLKSは対立関係ではあるが、目的が一致すれば共闘することも多く、持ちつ持たれつの関係となっている。
赤ノ目は他の団体組織と必ず敵対し、目的のために手段を選ばないため、特異対とLKSからは目の敵とされている。
また、この世界には他にも様々な怪異的団体組織が存在し、それらの一部は特異対やLKSも確認、警戒している。
警察庁警備局特異対策課(特異対)
特異対はエモクロア関連の事件を担当している警察の組織。
しかしエモクロアがいることは秘匿されているため、この組織に詳しい人は少ない。
ゆえに原因不明の変わった事件や厄介ごとの相談係のような雑な扱いを受けている。
しかし実際はエモクロア対策のスペシャリスト集団だ。

1.組織概要
特異対策課、通称「特異対」は日本の警察の警備部に編成されている特殊組織である。彼らはエモクロアを特異と呼称し、全国の特異に関する様々な事件を担当している。
神代の時代から人間社会に影響を与えてきた特異——神話的存在や妖怪変化、新たに生まれた都市伝説や異界からの来訪者たちを検知・データベース化し、日本国民への影響を最小限に留めるべく、日々様々な活動に従事している。
なお、特異の存在は公的には否定され、世間一般には秘匿されている。
このため特異対は特異案件——すなわち特別に変わった厄介ごとを引き受ける、警察内の変わり者集団として認識されている。
特異事件に関わり、共鳴を起こした他課の職員が強制的に転属させられることも多く、「オハライバコ行き」と揶揄されることがある。
しかし、実際に「御祓箱」とは護符などをしまう箱を指しており、特異に立ち向かうこの組織の実態と合致している。
課員が特異対の身分を隠して一般市民とコンタクトを取る際には「○○市 地域文化振興課」などと所属を偽ることもある。
特異対の課員は黒を基調とした服装を常とする。このため、エモクロアを巡る他の組織の人間からは「モフク」「カラス」などと呼称されることもある。
なお、《怪異》のことを「特異」と呼称するのは、特異対の実態について認識している関係者だけである。
2.歴史
天元三年、那智山の天狗を封じた陰陽師安倍晴明が、当時の皇太子によって任じられ創設した秘密組織がルーツとなっている。機関の人間は魔除けの印――五芒星や九字紋を身に着け、様々な時代で暗躍した。
明治以降は公の舞台から姿を消し、単なる『地域文化調査課』として内務省内に組織を残していたため、敗戦後のGHQの監視からも逃れた。
平成元年に名を『特異対策課』と改め警察庁警備局内に移設、現代までその歴史を絶やすことなく受け継いでいる。
3.組織
特異対策課本部には大きく分けて『内務班・調査班・解析班』の3部門が存在する。警視庁以外の警察署、いわゆる所轄では『内務班・調査班』の2部門のみが設置されているケースが多い。
警視庁には数十名の職員が、各道府県警察本部には十名前後の職員が常勤していると目されているが、正確な人数は警察庁上層部以外には秘匿されている。
職員の中でも特異に対するスタンスは様々に分かれている。「特異は鎮め、祀るもの」という認識を持ち対象に敬意を払うものもいれば、「即時抹消すべき敵」という信念を持っているものも在籍している。
特に調査班の特殊作戦部隊には特異に対する悪感情を持っている人間が多い。
これは同部隊の殉職者数・逸脱者数が特異対内部において圧倒的に多いことも無関係ではないだろう。
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- 内務班
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経理や人事など、一般的な事務職をになう部署。
装備品の管理などもここで行っている。
特異対策用の特殊武器を手に入れるためには内務班の許可が必要となる。
特異事件の事後処理や他部署との交渉なども一手に引き受けており、特異対の縁の下の力持ちと言えるだろう。
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- 調査班
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特異についての実地調査および実質的な対策をになう部署。
主にフィールドワークにて特異の情報を集めたり、各地に封じられている特異の状況を確認する職務を行うが、事件や問題が発生した場合は対策活動も行っている。
危険を伴う調査になることも多いため、特異対策用の特殊装備が支給されている。
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- 調査班 特殊作戦部隊 ー 通称「禊祓」
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調査の結果、人や土地に被害をもたらす危険性の高い特異だと認定された際、これを祓い無力化する特殊作戦部隊が「禊祓」である。
最も危険かつ過酷な部署で、隊員の殉職・逸脱が数多く発生している。
元捜査第一課や第四課の刑事、機動捜査隊出身の者など、荒事に慣れた人間も多く籍を置いている。
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- 解析班
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調査班が持ち帰った特異に関する事物を調べ、無力化するための研究をになう部署。
鑑識からの出向職員や元在野の研究者、神職の人間など様々な人間で構成されている。
内閣情報調査室や公安調査庁など情報機関の人間が、特異と接触したことにより転属させられたケースも見られる。
コンピューターを扱う作業に特に長け、封じた特異が外部に漏れ出さないよう、管理・保管も行っている。
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- 解析班 特殊装備開発部門 − 通称 ラボ
- 解析の結果を踏まえ特異対策用装備の開発を行っている部署。かなり変わり者が揃っている。
4.主要人物
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- 警察庁警備局 特異対策課 課長
大宮司 宰 -
50代 男性。 特異対の責任者。
キャリアとして警察庁に入ったが、ある警察本部の警視監を務めていたとき、特異案件に巻き込まれ下半身不随となった。
このことにより、出世の道は断たれたが、特異と相対した際の指揮能力を買われた大宮司は特異対策課に配属され、数年のうちに課長に就任した。
専用の電動車椅子で移動し、事件の現場に出てくることは多くない。
- 警察庁警備局 特異対策課 課長
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- 特異対策課 内務班 班長
播磨 隆康 -
元々は所轄署の総務部長であったが、特異と共鳴したことをきっかけに特異対に転属させられる。
基本的に現場に出ることはない。
警察組織内の政治手腕に長けており、特異対の財源を確保するため日々奔走している。
装備や経費の無駄遣いに厳しいため、共鳴者が調査班や解析班に在籍している場合、金勘定に細かくてうるさいと感じることもあるだろう。
しかし特異への対策に本当に必要な予算に関しては、どんな手段を使ってでも捻出することを信条としている。
- 特異対策課 内務班 班長
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- 特異対策課 調査班 班長
五十嵐 文治 -
警視庁組織犯罪対策部出身の大男。
暴力団事件などを担当する、いわゆるマル暴から転籍してきた叩き上げの刑事。
事件を解決するためであれば多少の違法行為には目をつぶり、アウトローな界隈にも顔が利く。
必要と判断すれば、マスコミを含め、警察と無関係な一般人にも独断で情報を流すことがある。
事件のない日は必ず定時で帰宅するが、何をしているかは聞いても答えないため誰も知らない。
- 特異対策課 調査班 班長
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- 特異対策課 調査班 特殊作戦部隊「禊祓」隊長
????? -
全てが謎に包まれており、その正体を知る者は特異対課長の大宮司のみである。
あるいは、共鳴者の中のいずれかが隊長なのかもしれない。
- 特異対策課 調査班 特殊作戦部隊「禊祓」隊長
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- 特異対策課 解析班 班長
御前 巴 -
喫煙者で酒好きの妙齢女性。
ホワイトハッカーとして情報機関に所属していた過去がある……と噂される。
寝食を忘れ特異の研究に没頭しているため、机の下で寝ている姿を頻繁に目撃されている。
- 特異対策課 解析班 班長
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- 特異対策課 解析班 特殊装備開発部門 責任者
石見 学 -
年齢不詳の男性。
玩具メーカーで特撮番組の玩具を開発していたが、その玩具が特異に対して実際に効力を発揮したという事件をきっかけに特異対にスカウトされた。
調査班、特に禊祓向けの特殊機能を内蔵した武器・防具を担当している。
古い神職の家系の出身で生まれながら宮司になることが定められていたが、 家出して海外留学。工学系の博士号を取得して、玩具メーカーに就職したというかなり変わった経歴の持ち主。
有能だが、武器や防具に余計な機能をつける上に、装備品の見た目に異常にこだわるため製作予算が高く、内務班から常に小言を言われている。
- 特異対策課 解析班 特殊装備開発部門 責任者
5.補遺
特異対策課へ希望して配属される人間はごく稀である。ほとんどの場合、何らかの形で特異と関わってしまった際に適性を見せた警察職員や他省庁の人間が、引き抜かれる形で転属させられている。
珍しいケースだが、民間企業や大学などから臨時職員として雇われることもあるようだ。
特異対策にあたる調査班員は五芒星の刻印を施した特殊拳銃に、祓い清められた(あるいは意図的に穢した)弾丸を使用するなど、現代兵器と清祓を融合させた装備で特異に立ち向かう。
服装はブラックスーツだが、私服で任務に当たることも多い。しかし身につけるものは基本的に黒のみで、その特徴的な出で立ちから、他部署の人間からは「モフクの連中」「変人ども」「カラス」などと呼ばれることがある。
特異に対する課員の感情は様々である。友好的な特異の存在を知っており協力関係にもなれると思っている者から、「全ての特異は殲滅されなければならない」という信念を持つ強硬派まで様々いる。
特異対の武器の中には、日本神話の神々の力を拝借し使用する物も存在する。
禊祓の上級官には「スサノオ」「ツクヨミ」「アマテラス」などの加護を受けた者もいるかもしれないが、当然力の行使には大きなリスクが伴うだろう。
6.シナリオフック
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- 『はじまりの日』
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新人警官であった共鳴者は、とある怪異の引き起こした事件に巻き込まれて意識を失う。再び目が覚めると、そこは見知らぬ部屋の中だった。車椅子に乗った初老の男が現れ、共鳴者に告げる。
「特異対へようこそ」
共鳴者は怪異との共鳴により心身が変質し、特異対の調査・研究対象となっていた。
解析班の調査により、『現在も都市部で事件を引き起こしている怪異を鎮めるためには共鳴者の協力が不可欠である』ことが判明し……。
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- 『喪服の男』
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共鳴者たちはごく普通の会社員や学生だが、街の地理に詳しく、顔が広いという取り得があった。
ある時、とある路地の近くを通りがかると、路地裏に身を潜めていたブラックスーツの大男に声を掛けられる。
「先週、この路地に入ったきり行方をくらました女について知らないか」
共鳴者たちはその女に覚えがあった。最近妙に羽振りが良く、怪しげな人間たちと酒場へ入っていく様子を何度か目撃していた。
五十嵐と名乗る大男と話すうち、共鳴者たちの頭の中に声が聞こえ始める。
「そいつを始末しろ――」
共鳴者たちの手は、自分の意思と関わらず五十嵐へ向かって伸びていき……。
LKS警備保障 株式会社
LKS警備は怪異を捕まえて、商売に使えないか研究してる会社だ。
特異対と協力することもあるが普段は仲が悪い。
悪の組織ではないが、正義の会社でもない。
政治家と癒着していて大抵のことはごまかせるようだ。

1.概要
LKS警備保障(通称LKS)はソロモン財団を母体として設立された警備会社だ。
ソロモン財団の歴史は古く、その起源は謎に包まれているが、組織の名称はソロモン王に由来する。ソロモンは古代イスラエルの王で、悪魔や天使を使役する力を持っていたと伝えられている。
LKS警備保障は、大都市に支部を持つ中規模の警備会社として認識されているが、その実態はソロモン財団の手足となる実践部隊だ。LKSの名称は悪魔や精霊の使役法を記した魔導書ソロモンの小さな鍵の頭文字に由来している。
LKS警備保障の創業社長である鍵崎亜門は野心家で、自身の成功のために《怪異》を使おうと目論んでいる。つまり、《怪異》をビジネスの資源として考えており、彼の目的はソロモン財団の目的から逸脱しているのだ。
《怪異》に関わる事件の現場では特異対と顔を合わせることが多いが、組織の目的が違うため対立することも多い。
両組織の構成員は基本的に「同じ《怪異》を追うライバル」となるが、同じ事件を追ううちに、目的が同一になることも、ときには友情が生まれることもあるだろう。
ソロモン財団は警察庁に影響力を持つ政治家と太いつながりを持っており、少々の無茶では事件が表面化しないように根回しされている。
LKS警備保障の制服は白を基調とし、装備品には鍵の意匠がついている。このため他の組織からは「シロフク」「カギツキ」などと呼称されることもある。
採用は基本的に縁故採用で、一般に求人は行っていない。
2.沿革
LKS警備保障は、鍵崎亜門がソロモン財団の資金援助を受けて設立した企業だ。
ソロモン財団は、《怪異》を捕らえて保護し、使役方法を確立することを目指している組織であり、LKS警備保障はそのための手足となる実践部隊として設立された。
しかし鍵崎は、財団には秘密で『怪異の力の製品化』に取り組んでいる。LKS警備保障の商品開発部は捕らえた《怪異》の力を利用して様々な製品を開発しているのだ。
こうして開発された多くの製品の中には、安全性が確保されていないものも存在する。
LKS製の武器や薬品は、警察の《怪異》対策部隊である特異対に支給されることもあるが、多くは海外へ密かに輸出されている。
LKS警備保障は、大きな施設や大規模興行の警備を行う会社として一般に認識されている。だが会社上層部のメンバーは事業の実態はもちろん、ソロモン財団の目的や、鍵崎の野心も把握している。
3.組織図
『管理部』『営業部』『警備部』『商品開発部』『法務部』などの部があるが、ほとんどの業務は警備部と商品開発部に集約されている。
警備部内には調査課、警備課、研究課があり、怪異の調査・捕獲・破壊・無力化・解析などを行ってから商品開発部へ移送している。
商品開発部では怪異の営利化の研究を日々行っており、武器の製造も行っている。
LKS警備保障上層部には《怪異》を事業に利用してソロモン財団の影響から独立を目指す「鍵崎派」と、《怪異》を保護し使役する方法の確立を目指す「財団派」(怪異の営利利用に否定的)が存在し、その勢力は二分されている。
末端の構成員の中には、そもそも会社の目的すらわかっていないようなものも混ざっているかもしれない。
4.主要人物
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- LKS警備保障株式会社 代表取締役社長
鍵崎 亜門 -
30代男性。
自信過剰気味な野心家。
LKS警備保障を足掛かりに《怪異》の利用を事業化して、実業家として成り上がろうとしている。
上昇志向が強く、強引でわがままだが基本的には善良である。
鍵崎家は代々エクソシストの家系であったが、亜門の祖父の代に悪魔を使役する法を研究していることが発覚し教会から破門されてしまう。以降も鍵崎家は悪魔祓いとして活動していたが、その実態はカウンセラーや霊感商法を行う占い師のようなものだった。
父の跡を継ぎ悪魔祓いとなった亜門であったが、《怪異》との遭遇をきっかけに穴吹と出会い、ソロモン財団を紹介される。
そして鍵崎は財団の援助を受けLKS警備保障株式会社を立ち上げる。会社の経営については鍵崎に一任されているが、月に一度財団のエージェントが査察と称した監視にやって来ることを苦々しく思っている。
- LKS警備保障株式会社 代表取締役社長
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- 社長室長
穴吹 千春 -
(鍵崎派)
鍵崎が悪魔祓いだったころからの腹心。
《怪異》の営利利用の可能性について鍵崎に進言しLKS警備保障の立ち上げに大きく影響を与えた。LKSの一部の事業を統括しており、各部署の責任者の頭越しに独断で現場に直接指示を出すこともしばしばある。
下の名前で呼ばれることを嫌い、社員には必ず名字で呼ばせるが、鍵崎と安藤の二人は旧知の仲なので穴吹のことを名前で呼ぶことがある。
穴吹の仕事の実態を知っているスタッフは社長室に呼び出されると「 トニースターク TIPS 「アイアンマン」の主人公。アメリカ国軍に武器を納める武器商人だった。 に呼ばれた」と軽口をたたいたりする。
- 社長室長
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- 警備部 部長
安藤 力也 -
(鍵崎派だが派閥とかよくわかってない)
大手警備会社の主任であったが、旧知の間柄である鍵崎に会社設立のため引き抜かれた。
性格は豪放磊落。週に5日はジムに通い、休日は図書館で読書をしている。趣味は料理と裁縫。
- 警備部 部長
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- 警備部 研究課 課長
縁野 仁之介 -
(ソロモン財団派)
製薬会社の研究職だったが、《怪異》の影響により家族が死亡した事件をきっかけにLKS警備保障にスカウトされる。
入社当初は《怪異》全般に対して悪感情を抱いていたが、研究を進めるにつれ《怪異》の多様性に気づいていく。
現在は、《怪異》の中にも感情を持ち、人に近い存在もいるということに気づいている。
『LKSに捕らえられてしまった《怪異》を解放するミッション』を持つ共鳴者がいれば、協力者となり得るだろう。
- 警備部 研究課 課長
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- 商品開発部 部長
御前 静 -
(無派閥・《怪異》にしか興味がない)
短髪の妙齢女性で、特異対『解析』班長の御前巴の妹。
完璧主義者の自信家だが挫折に弱く、想定外の事態に見舞われるとパニックを起こし、研究室に籠もってしまう。
怪異を研究材料としか認識しておらず、新たなエモクロアが持ち込まれることを日々心待ちにしている。
- 商品開発部 部長
5.補遺
社名のLKSは悪魔や精霊の使役法を記した実在の魔導書『Lesser Key of Solomon(ソロモンの小さな鍵)』の頭文字から取られている。
LKS警備保障株式会社は一般に求人を行っておらず、ほとんどの上位職はソロモン財団のエージェントがスカウトした人間たちで構成されている。一般職員は警察や自衛隊、研究機関・大学、怪異による事件の被害者などからスカウトされることがあるようだ。
民間人であるため基本的に銃火器は用いることができず、代わりに特殊警棒やスタンガンなど、法的に一般人の所持可能な武器類を常に携行している。商品開発部では対怪異用装備を開発しているが、怪異ごとに効果が安定せず専用の改造が必要になるなど対応が後手に回るケースが多い。
6.シナリオフック
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- 『イベントスタッフ』
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共鳴者たちは、とある大規模音楽イベントの警備スタッフとして臨時で雇われていた。
海外からやって来たブラックメタルバンドの演奏が最高潮に達したとき、突然空がかき曇り、雷鳴が轟き始める。
「とうとうおいでなすったな」
警備主任の安藤と名乗る男が呟き、猛禽めいた笑みを浮かべた。
稲妻が雨のように降り注ぎ、撃たれた観客は次々と蒸発していく。
「命が惜しけりゃ、そこのテントに隠れてな!」
安藤は共鳴者たちに告げると、ゴム質のコートをまとって稲妻の雨の中へ消えていくのだが……。
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- 『エキストラ』
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とある映画の撮影現場にエキストラとしてやって来た共鳴者たち。遠くにはテレビで見慣れた俳優やタレントが大勢おり、他のエキストラもどこか浮足立っていた。
共鳴者たちが待機する休憩所の近く、映画監督が何者かと立ち話をしているのが聞こえてくる。
「今回も、きっと妙なことが起こると思います。頼みますよ。うちの現場、守ってくださいね」
白いコートを着こんだ癖毛の男が、監督の言葉に「もちろんです、我々がしっかり調査させていただきますよ」と笑顔で答えた。
やがて本番が始まる。監督の合図と共に、共鳴者たちがカメラの方へ歩き出すと、突然奇妙な地響きが起こり……。
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- 『深夜残業』
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とある雑居ビル内のオフィス、共鳴者は一人残業をしていた。上司から「今日はノー残業デーだ。絶対に定時で帰れよ」と言われていたのだが、明日の朝一番に行われるプレゼンの資料がまだ仕上がっていなかったのだ。
定時で退社したふりをしてトイレに隠れ、社員が全員帰宅した頃を見計らって共鳴者はオフィスに戻る。暗いオフィスの中で、パソコンモニターの明かりだけが共鳴者の顔を照らしている。
時刻が23時を回った頃、突然階下から大勢の気配がやって来ることに気付く。
「作戦行動開始まで60分。各員、持ち場へつけ!」
物々しい気配と、何やらガチャガチャと金属質のものが擦れ合う音……。
呆気に取られている共鳴者のオフィスの扉が、ガラリと開かれる。
「誰だ? ノー残業デーに残ってやがる悪い子は」
真っ白い警備服をだらしなく着くずした金髪の男が共鳴者を見てニヤリと笑い……。
赤ノ目
赤ノ目は蛇の《怪異》を信仰している新興宗教団体だ。
怪異の力を使って事件を起こしたり、敵対組織と抗争を起こしたり、ほとんど反社会組織と言える。
特異対とはしばしば衝突して逮捕者も出ている。
教祖の女性は130歳とも言われている。

1.概要
人為的に《怪異》を作り出し、あるいは鎮められていた祟り神を呼び覚まし、日本に混沌をもたらそうとする宗教団体。
「長船ちえ」なる老婆を教祖として様々な蛇神を崇めているが、その教義や真の目的は一切が謎に包まれている。平安時代の史料にも長船らしき人物が記されており、彼女自身が怪異そのものではないかとも疑われている。
主宰神として祀る蛇神の名前は不明だが、信者はその神を「姫様」と呼ぶことがわかっている。
2.歴史
大正初期に長船千枝子なる一人の女が神がかりに遭い、立ち上げた宗教『蛇之目』が元になっている。
正体不明の山伏と結託した長船は、神道、仏教、修験道などが複雑に絡み合う独自の信仰を築いたと言われる。
蛇之目は山岳地帯を中心に多くの信徒を集めたが、やがて政府の弾圧により地下へ潜ることになる。長船に関して公に残された最後の資料では、大正十三年に山陰地方の霊山へ立て籠もっていたところを山火事によって信徒もろとも焼死したとされているが、その後も各地で長船らしき女が目撃されたという。
昭和二十一年、戦後の混乱化にある町で、闇市の元締めをしていた的屋系暴力団『長安師組』の人間が中心となって宗教『赤ノ目』を名乗り、強引な手段で信徒を増やしていった。『赤ノ目』は、「長船ちえ」なる女を教祖としているが、彼女が長船千枝子と同一人物かどうかは判明していない。
昭和三十年に支持母体となる長安師組が複数の暴力団と大規模な抗争を起こした後、赤ノ目は公の資料から完全に姿を消す。
信徒の数や教団の規模を知る者はいないが、現代に至るまで山村などを中心に勢力を拡大し続けていると見られている。
3.組織図
教祖の長船ちえを筆頭に、数人の幹部、各地の支部を治める支部長がおり、その下に数千とも言われる信者を抱えている。幹部の詳細や支部の数、信者の総数などは全て不明となっている。
4.主要人物
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- 赤ノ目教祖
長船 ちえ -
赤ノ目の教祖であり、年齢・出自等一切が不明の老婆。
正体不明の蛇神を「姫様」と呼び崇めている。数年に一度「姫様」より託宣を得て信者に告げ、各地に混沌をもたらそうとする。
- 赤ノ目教祖
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- 赤ノ目幹部
幸太郎 -
年齢不詳の少年。
子どもらしい語り口調だが、古参の信者によると初めて会ったときから少年の姿をしており、その見た目は数十年も変わっていないらしい。
本人によると大正末期、長船千枝子により行われた人肉食の儀式以降、身体の成長が止まっているそうだ。
その言を信じれば、実年齢は100歳を超えていることになる。
- 赤ノ目幹部
5.補遺
布教活動の実態は明らかになっていないが、特異対との衝突で逮捕された信者によれば、支部や信者の経営する店や企業が全国各地にあり、それらがコミュニティの中心となっているのだという。学習塾や手芸教室、ヨガ教室など勧誘の場は多岐にわたっている。
信徒の証は、教団のシンボルでもある目の入れ墨、もしくは蛇状の焼印で付けられた赤いケロイドの引き攣れで、これらは入信の時期によって異なる。焼印による証は古参の信徒を見分ける一つの目安になっている。
教団のシンボルカラーは赤であり、敬虔な信徒は赤の服飾品を好む傾向にあるが、当然彼らが身元を悟られたくない場合においてはその限りではない。
6.シナリオフック
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- 『新入生歓迎』
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晴れて志望大学に入学した共鳴者たちの元へ、熱烈なサークルの勧誘が来た。
「うちのサークル、めっちゃ面白いんだよ! 飲み会は多いけど、酒の強要とかもないし、一回でいいから話を聞いてみない?」
勧誘の男に誘われるがまま、共鳴者たちはとある喫茶店へやって来た。座席はほぼ埋まっていたが、奥のボックス席だけがちょうどよく空いた。男とマスターは顔見知りのようで、気さくに挨拶を交わしている。
「その子たち、今年の新入生?」
「ええ、これから話を聞いてもらうところです」
共鳴者たちが席に着くと、店内の客が一斉に共鳴者たちの顔を見て、全く同じ言葉を叫んだ。
「ようこそ、我々のサークルへ!」
喫茶店の入り口が分厚いシャッターで閉じられていく。シャッターの裏側には、爬虫類の目を思わせる奇妙なシンボルが描かれており……。